SPECIAL INTERVIEW

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Homecomingsが約2年半ぶりの新作『WHALE LIVING』を完成させた。映画「リズと青い鳥」の主題歌として制作した“Songbirds”を除き、全曲が日本語詞というバンドにとって大きな試みも話題の同作。ここでは、メンバー4人全員が参加したインタヴューを全3回に渡ってお届けする。まず、前編では前作『SALE OF BROKEN DREAM』以降のバンドについて。2016年には〈フジロック〉へと出演するなど、順風満帆に活動しているように見えた彼らだが、実は解散寸前でもあったという。当時のホムカミが陥っていた危機的な状況の背景は? そして、いかにそこからブレイクスルーを遂げることができたのか? 率直に語ってくれた。

INTERVIEWER 田中亮太

――まず、前作『SALE OF BROKEN DREAMS』を振り返ると、いまの地点からはどんな作品だと捉えられますか?

福富優樹(Gt)「作ったときは自分にとって完璧なものが出来たなと思ったんですけど、バンドとしてはもうちょっとやれたなーという面も多い作品でしたね。自分が書いた歌詞の面ではすごく気に入っていて、何度も歌詞を読み返したりするんだけど、意外にも音源としてはあまり聴かなかった。その反省もあって、前作は4人でセッションするみたいな形で作ったんですけど、以降は(畳野)彩加さんがデモをGarageBandでわりと作り込んでバンドに持ち込むようになったんです、ある程度最初に形が見えていたほうが作りやすいなと」

福田穂那美(Ba)「出てすぐのときは、めっちゃ気に入って聴いてたけど、確かに最近はあんまり聴いていないかな……。でも、作り方を変えたのがそういう理由やとは知らなかった」

福富「前作の曲はライヴでより形作られていったものが多いんです。“LIGHTS”とかも音源と今のライヴだと全然違う。新しいフレーズが入ってたり、ドラムもいっぱい変えてたり。だから、音源が完成形というより、そこから膨らませていったアルバムだという印象ですね」

――では、前作のリリースから現在にいたるまでの以降の2年半、バンドを進めてきた原動力は?

福富「あのアルバム出したあとは〈フジロック〉にも出たし、1年間でライヴを100本くらいやったんです。ライヴをたくさんやりながら、コンセプトを決めずに曲を作る、そういう作り方をしてみようと動いていて、それが形になったのが『SYMPHONY』(2017年)だった。でも、あれが限界やったというか、ライヴしながら作っても、結局4、5曲くらいにしかならないとなーと実感して。『SYMPHONY』をリリースしてからの1年間は、アルバムを作ることがメインになって。そのなかで京都新聞のCMへの楽曲提供(“アワータウン”)とか京都アニメーション制作の映画『リズと青い鳥』の主題歌とかが決まっていったのかな。あと、チャットモンチーのトリビュート・アルバム『CHATMONCHY Tribute 〜My CHATMONCHY〜』とかnegiccoに曲を作るとかも」

畳野彩加(Gt /Vo)「その行程で、バンド全員でやるのでなく、私がデモを作り込むというさっき言った形が馴染んできた」

――『SYMPHONY』のについてインタヴューしたときに、福富さんは〈ひとまず、それまでの自分たちにピリオドを付けるための作品〉と言っていました。福田さんと石田さんも、そうした視点を持っていました?

福田「うーん、まぁ気持ち的にはあったかもしれない」

福富「それはどういったもの?」

福田「うーん、どうやったかなー(笑)。どんどんいろいろなことを忘れていってる。どんな気持ちやったんやろ? とりあえず終わったという安心感はあったかな。あのときくらいは結構しんどかったから」

福富「『SYMPHONY』はしんどかったイメージはあるね。トータルですごく時間がかかってるし。曲はもう2016年の年末くらいには揃ってたけど、なんかうまく形にならんくて、ようやく夏にリリースできた。バンドとしてもライヴはめちゃくちゃ多くて忙しいけど、それでライヴバンドになったなって感じはしなかったんですよ。今年の忙しさは、ちょっと違うというか、外仕事で曲を作るとか音楽制作で忙しい1年。それに比べて、2016年や2017年はもっと雑っていうか(笑)。ライヴをただこなしていくみたいな。それでバンドが疲れていってる感じはあったかな」

――じゃあバンドのムードも、今のほうが良い?

福富「うーん、僕にとってはすごく……。どうですか?」

福田「2017年がいちばんピリピリしてたんじゃないかな」

――畳野さんは『SYMPHONY』のときに、〈いまは大人になることや変化に向き合わなきゃいけないタイミング〉だと話されていたんです。バンド全体として、今後の人生を意識せざるをえないという感覚もありました?

福田「そういうのはめちゃくちゃありましたね(笑)。それで去年あたりは、みんながしんどい感じにはなってたんかも」

福富「それぞれが思ってるだけじゃなく、もう話として出てくるくらいにはありました」

――それは、たとえば日本語詞の楽曲に取り組むなど、バンドの方向性についての話ですか? 

福富「ってよりは解散する/しないくらいまで(笑)。それくらいまでなってたし、そうなってもおかしくないくらい雑な感じで忙しかった」

畳野「何に向かって行っているのか、この先の自分が想像できない感じ。2017年の自分たちのまま2、3年後もその状態が続くのだけは辛いと思っていて、だからみんなで〈ちょっとどうですかねー?〉〈みんなどう思ってますかねー?〉と自分自身のこともお互いのことも思って話す機会が多かったんです」

――そうだったんですね……。その状況を打破するきっかけは何だったのでしょう?

畳野「今年のはじめに、京都のラジオ局、α‐STATIONでレギュラーの番組(〈MOONRISE KINGDOM〉)を始めたり、京都新聞に楽曲を作ったり、そういう自分たちが関西にいるからこそオファーされた仕事が重なって。そこで、〈やっててよかったんだ〉と実感できたんです。関西でやっている意味というか、ホムカミとして4、5年やってきた結果が、いろんなところからの仕事として、形になった。それは結構大きかったな」

――徒労じゃなかったというか。

畳野「Homecomingsが関西にいることで、見てくれてる人がいたんだなーと思えた」

福富「それがホントに同じタイミングで立て続けににきたんです。チャットモンチーのトリビュートや京アニも……」

畳野「まるで漫画みたいだったよね。こういうこともあるんだなって」

福富「もう辞めるって言ってるのにね。それは(Second Royal主宰の)小山内さんの空気の読めなさもあったな(笑)。ラジオのレギュラーがはじまるからって言われても……」

畳野「うちら、来年の夏にいるかどうかわからんぞって(笑)」

――ハハハ(笑)。ラジオ番組〈MOONRISE KINGDOM〉の選曲をするうえで意識していることは?

石田成美(Dr)「毎回、2人ずつで出演しているんですけど、誰がパートナーかで曲を選んだりはしているかな」

福富「そうですね。なるちゃんとやるときは、デ・ラ・ソウルとティーンエイジ・ファンクラブがコラボレーションした楽曲“Fallin”を持っていったり。聴いてくれる人にはもちろんやけど、なんとなくメンバー同士でオススメするみたいな気持ちも半分あって」

――音楽的な共通項が増えていきますよね.

福富「自分が出ていない回も聴くし、そこでこういうのを聴いているんやなーとか発見もあるし、自分も良いなと思って聴くという。毎週そういうのがあると良いですね」

――じゃあ「リズと青い鳥の主題歌」として、シングルカットもされた“Songbirds”は、バンドをポジティヴに変えるそういった出来事を経て作ることができたんですか?

福富「〈経て〉というよりは結構ぜんぶ同時進行で、チャットモンチーやりながら京都新聞の曲作りながら、京アニの打ち合わせに行くみたいな。それらが今年の1月に重なっていたので、とりあえずみんなで石炭をめっちゃ入れて、ひたすらやってましたね。だから、良いムードってより、〈やらな! がんばらな!〉みたいな雰囲気」

畳野「そうそう、期待に応えなきゃなって」

石田「“Songbirds”に関しては、みんなで京アニに行った経験が大きいと思います。それまでは4人で共有したものを曲に落とし込めるってのはなかったけど、それが出来た曲ではあるかな」

福冨「打ち合わせのあとに、京アニの作業場を見学してみてください、作ってるところを一度ご覧になってくださいと言われて行き、そのときにはじめて動いている絵を観たんです。その余韻もあってか、その日は4人で一緒に一駅分歩いて帰ったんですよ(笑)。見学後にバンドの練習する予定やったんですけど、なんかこうグッときてキャンセルし、線路沿いを歩いてね」

畳野「夕陽がすごくきれいでね(笑)」

福田「それから六地蔵にあるショッピングモールのMOMOテラスで、みんなでご飯を食べて、ミスドを持ち帰りして」

福富「だから、雰囲気が良くてソングバーズが出来たというより、“Songbirds”によってバンドがより良い感じになっていった」

――“Songbirds”は、新作『WHALE LIVING』にも収録されています。バンドにとっても、やはり大事な楽曲になったということでしょうか?

石田「自分たちの集大成的なものが出来たと思えました」

福田「録ってる時点で〈めっちゃ良い曲やなー〉と感じられたし、スタジオ入って2時間くらいでパッと出来たんですよ。そんなんもすごく久しぶりやったから、嬉しかった」

畳野「正直、“Songbirds”が出来るまでは、Homecomingsのキャラクターやバンドの方向性が定められていない状態だったんです。楽曲のヴァリエーションがどんどん増えていってたから。そこで“Songbirds”が出来たことで、〈あっ、もうこっちだな〉って。歩んでいく方向が私的には決まった感じがあって。Homecomingsとしてやるべきものは、ミドルテンポで〈ああ良い曲やなー〉って思えるものなんだなと」

福富「いろんなリズム試したりはやったほうがいいと思うんですけど、仕上がりの温度感はこれがちょうどいい。自分たちのいちばん良いものが出来る温度感がわかったんです」

畳野「それが無理せずに出来たってのも大きかったし、そのおかげで『WHALE LIVING』があるっという感じはあります」

――じゃあ“Songbirds”を契機に、新作のモードに切り替えられた?

福富「うん、それまでのまとめというか、ようやく自分たちの代表曲を作れた実感があったんです」

畳野「自分たちでちゃんと良いと思えて、自分たちの好きなものが――ティーンエイジ・ファンクラブなどギター・ポップの要素もたくさん詰まっている楽曲。それがポンと出来たことで、この流れで作っちゃおうとなれた。〈ここからまた新しいことをしよう〉って」

(続く)

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